デジタルプロダクトから空間デザインに至るまで、多岐にわたるプロジェクトを手掛けるデザイン・イノベーション・ファーム「Takram」。同社はSTUDIO ExpertsのShunsuke KUDOと協業し、馬や自然と向き合う体験を通じた内省・行動変容プログラム「Nature Dialogue Program」のリブランディングを実施しました。このプロジェクトでは「Takramのメンバーが実際に研修プログラムを合宿形式で体験し、非言語的な感覚を共有したうえでブランドの提供価値を構築する」という、ユニークな進め方でデザインが形作られていったそう。今回はTakramの渡邉さん、高井さん、山田さんの3名に本プロジェクトのデザインプロセスと、STUDIOを活用した協業のポイントを伺いました。北里研究所のリブランディングプロジェクトでもSTUDIOを活用──TakramでSTUDIOを活用し始めたきっかけを教えて下さい。渡邉:学校法人 北里研究所のリブランディングプロジェクトをTakramでお手伝いした際に、初めてSTUDIOを活用しました。「北里の未来を透明に考える」というコンセプトを掲げるこのプロジェクトでは、北里大学の学生さんや教職員の方々にもプロセスを共有し、コミュニケーションを取りながら北里のあり方を共に考えていくという過程を踏む必要がありました。プロジェクトの現状を伝えるとともに、関係者の方々の意見を受け止めるプラットフォームとして開設したのが、STUDIOで構築された「BRANDING BLOG」です。デザインプロセス上、頻繁にサイトを更新する必要があったため、更新作業が容易なCMS機能があるSTUDIOを採用することにしました。>北里研究所のリブランディングプロジェクト「KITASATO BRANDING PROJECT」の導入事例インタビューはこちらブランディングの一環として中長期を見据えてSTUDIOを導入。決め手はデザイン性の高さとCMS機能の充実度 | 導入事例 | STUDIO山田:私は副業のWeb制作のプロジェクトで活用した経験があり、自身でサーバーとの接続・ドメイン取得・デザイン実装まで担当しました。そのときにすごく素早く実装できることが分かり、スケジュールのタイトなプロジェクトで役立ちそうだなと感じていました。デザインの方向性と親和性が高かったSTUDIO Expertsに依頼▲「Nature Dialogue Program」サイト──今回リブランディングを行った「Nature Dialogue Program」とはどんなものなのでしょうか?高井:「Nature Dialogue Program」は札幌市で牧場を運営する株式会社COASが提供する、馬との体験を通じた内省・行動変容プログラムです。今回のプロジェクトでは本プログラムの今後の事業展開を見据え、プログラム構造の整理やビジュアルのトーン&マナー策定、ネーミング・ステートメント作成、サービスサイトの制作を行いました。──リブランディングプロジェクトに携わったメンバーを教えてください。渡邉:今回のプロジェクトには、Takramからは私と高井、山田と柳井が参加しました。また、STUDIO実装はSTUDIO Expertsの工藤 俊祐さん(Shunsuke KUDO)、写真撮影は松村 隆史さんにご担当いただきました。──「Nature Dialogue Program」のWebサイト制作でSTUDIOを採用した理由は?山田:私も含めてSTUDIOに触った経験があるメンバーがいたので、今回目指すデザインが実現できそうだと具体的にイメージが湧いていたこともあり、最終的にSTUDIOを選びました。高井:リニューアル前のサイトもノーコードツールで作られていたため、クライアントの中で運用イメージがつきやすかったことも、STUDIOを選定した理由の一つです。また国産のノーコードツールなので専門的な知識がなくても更新しやすく、リリース後にクライアント側で何か困ったときもプラットフォーム上で問い合わせができるという点も安心感がありました。▲「Customer Reviews(お客様の声)」はCMSで管理──STUDIO Expertsの工藤さんに実装を依頼した経緯も教えてください。山田:STUDIOで実装しようと決まってから、STUDIOの事例に詳しいデザイナーの知人や、社内のデジタルプロダクトデザイナーからおすすめされた方も含めて、様々な選択肢を検討しました。その中でSTUDIO Expertsの工藤さんのページを拝見し、過去のLPデザインの実績や予算感を含めて一番マッチしそうだと思い、今回お願いすることにしたんです。渡邉:工藤さんの作るLPは、ミニマルでメッセージが伝わるデザインが印象的です。今回のプロジェクトに込めた思いをデザインに落とし込んで伝えてくれそうなイメージがわき、依頼をさせてもらいました。合宿を通して、非言語的な感覚をメンバーと共有できた▲Core Program(コアプログラム)のFeatures(ホースローグの特徴)より──プロジェクトはどのような流れで進んだのでしょうか? プロセスやポイントを教えてください。渡邉:今回のプロジェクトではTakramメンバー4名が牧場に4日間滞在し、実際に研修プログラムを体験しながら合宿形式でブランドを考えるというプロセスを踏みました。メンバーが同じ場を共有して、研修プログラムを自分たちの一人称で体感することを重視しました。クライアントから「プロジェクトのことはしばし忘れて、まずは人として学び楽しむ体験を優先した方が得るものが大きいのでは」とご提案いただいたこともあり、最初の3日間はしっかり研修体験に集中させてもらいました。牧場での滞在中はみんなで寝食を共にし、馬の体を洗ったり、ご飯を用意したりという作業から一日が始まります。馬の世話をする仕事が一息ついたらやっと人間の朝ご飯の準備に取りかかる。馬という「言葉の通じない他者」に向き合いながら、自己との対話を行う。それを通じてリーダーシップについて考えるという、ユニークな体験でした。面白かったのは、研修後、メンバーでこのサービスやブランドの提供価値をディスカッションする段になったとき、表現したいことやアイデアについて、もうすでに共通認識ができ上がっている感覚があったこと。色々なアイデアが出てくるのですが、議論が割れたり、意思決定で困ったりする場面はなく、合宿で得られた体験・体感がいつのまにか共有できていたのは面白かったですね。高井:深い議論でありながら、決して喧喧諤諤ではなかったですよね。非言語的な体験として、すでにみんなの中で共通して感じているものがあって、そこに内在する体験価値を言葉を交わす中で掘り起こすようなディスカッションができたのが印象的でした。山田:デザイナーにとっても、非言語的な部分の方向性のすり合わせは一番エネルギーと時間がかかるポイント。今回のプロジェクトは合宿という経験を経て、メンバー間で感性的な部分まで共有できたという点がとても特徴的だったなと思います。──合宿を通じて得られた非言語的な感覚が、上流概念の認識合わせをスムーズに進める鍵となったのですね。一方、牧場に行ったことがないプロジェクトメンバーに対して、その温度感や感覚をどう伝えたのでしょうか?山田:牧場に行ったことのないコラボレーターの方にも、感覚を共有し協働できるようにするのはまさにチャレンジでした。そこで今回は、ブランドのもつ世界観をビジュアルで伝える際のガイドラインをかなり作り込み、コラボレーターの方にお渡ししました。さらに、写真やWebサイトについては「静かな力強さ」「余白」「根源」「真摯さ」の4つのクリエイティブキーワードに紐付くムードボードを添え、伝えたい空気感が視覚的にも伝わるよう意識しました。工藤さんにデザインを作っていただいた後には、STUDIOのライブプレビュー機能で完成系を確認しつつ、コミュニケーションを取りながら細かい余白やアニメーションを調整していきました。──STUDIO実装を考慮したデザインをするにあたり、気をつけたポイントがあれば教えてください。山田:実装が難しそうなデザインの部分に関しては、事前に考慮しデザインを検討するよう意識していました。また、フォントはSTUDIOに導入されているものから選んだり、アニメーションはSTUDIOが得意とするシンプルな表現を活用したりと、STUDIOでの構築を前提にデザインを作りましたね。とはいえ、フォント選定においてモリサワフォントが使えることで選択肢はかなり充実していますし、フェードイン・フェードアウトのアニメーションも細かめに設定できるので、普段Webを作る際の感覚とそこまで大きな違いはなかったかと思います。STUDIOを使えばコンパクトな体制でWeb制作プロジェクトが進められる──今回のプロジェクトを経て、どのような点にSTUDIOのメリットを感じましたか?山田:まず、国産のノーコードツールなので、日本人のデザイナーにとって学習コストが低く、簡単に使い始められるのが魅力だと思います。また、社内ではプロトタイピングのタイミングでデザインツールからもう一歩作り込みたいというときに使用するケースも増えているようです。デザインプロセスの新たな手法の一つとしても非常に有効だと感じています。高井:デザインから実装、サイトの公開までワンストップでできるのは、すごく使い勝手がいいです。小規模サイトや短期間のキャンペーンサイトなど、フットワーク軽く情報発信をしたいとき、手頃で有力な選択肢の一つと言えるのではないでしょうか。例えば実際のWeb制作の現場では、Webサーバーの契約など、クライアント側のシステム関係の部署と連携した基盤整備が必要になることが多いですが、ステークホルダーや決裁のプロセスが増える分、プロジェクトのボトルネックになったりすることもあります。そういったところをスキップして、現場の担当者の方+デザインメンバーというコンパクトな体制でWeb制作ができる点が魅力的ですね。単なる表層的なデザインプロセスではなく、メンバーの感覚や体験に深く根ざした軸をもとに進められたという今回のプロジェクト。非言語的な感覚をデザインに昇華させるという表現方法への試みは、まさに「創造性の解放」を目指すSTUDIOのミッションとも重なるように感じました。STUDIO Expertsには今回のプロジェクトに参画されたShunsuke KUDOさんを含め、様々な強みや制作実績を持つ制作会社やフリーランスの方が在籍しています。Web制作プロジェクトにSTUDIOを活用したいと考えている場合はぜひご相談ください。