大規模なビジネスのニーズに対応した法人向けプランとして2023年11月にリリースした「Enterprise」プラン。大規模なトラフィックに対する拡張性、公開サイトのSLA99.9%、プロキシサポートなどを提供しています。今回は2024年4月にSTUDIO Communityで実施したウェビナー「大企業でのSTUDIO活用のヒント」のイベントレポートをお届け。Enterpriseパートナーとして登壇いただいた株式会社gaz、フラー株式会社の2社から語られたSTUDIOを活用した顧客支援のコツをご紹介します。※「Enterprise」プランについて詳しくはこちら350サイト以上の制作実績を誇るgazに聞く、エンタープライズ向けSTUDIO導入のポイント最初に登壇いただいたのは、福岡と東京に拠点を構える株式会社gaz代表の吉岡氏。同社のSTUDIOを活用した制作実績数は350件以上。ノーコードWeb制作プラットフォームSTUDIOのWeb制作代行会社・フリーランスが加盟するプログラム「STUDIO Experts」では、最高ランクのプラチナエキスパートとして登録されています。代表の吉岡氏はエンタープライズ案件におけるSTUDIO活用事例として、株式会社ベネッセコーポレーションの事例を紹介。幼児向けから成人向けまで多岐にわたる商材を展開している同社で、どのようにSTUDIO導入を推進したのでしょうか。吉岡氏「株式会社ベネッセコーポレーションではすでに膨大な数のWebページを管理しており、Web担当者の負担が大きくなっていました。そこでSTUDIOを導入し、各商材の紹介サイトの運用を現場に渡すことで、事業全体のスピードを上げる取り組みをしています。しかし、いきなりすべてのページをSTUDIO化するのはリスクがゼロではないため、部分的にSTUDIOの導入を進めています。そこで役立ったのが、Enterpriseプランのプロキシ連携機能です。これを用いてディレクトリ配下をプロジェクト化することで、リスクを最小限に抑えつつ、タイムリーな情報更新が可能になりました」ディレクトリ単位など、段階的にプロジェクトを切り分けてリリースできるハードルの低さは大手企業においても大きなメリット。その柔軟さが評価され「コーポレートサイトやキャンペーン向けの単発サイトのほか、近年はオウンドメディアや新規事業の仮説検証のためのWebページの需要が増えている」と言います。また複数のプロジェクトの請求を一括でまとめることが可能な点や、ベンダーチェックの対応が早い点も企業から好評のようです。株式会社gazでは、制作代理店やデザインプロダクションとの協業プロジェクトを強化しています。その取り組みとして株式会社シフトブレインや株式会社ベイジといったパートナーとタッグを組み、大企業のブランド戦略設計からWebサイトの公開・運用までを一気通貫でサポートしている事例を紹介しました。こうした協業を円滑に進めるために、gazではどんなことを行なっているのでしょうか。吉岡氏「代理店やデザインプロダクションが初めてSTUDIOを使うケースも多いため、事前に『STUDIOでできること/できないこと』が明確にわかるNG機能チェックリストをお渡しし、クライアントにSTUDIOを提案しやすくなるようにしています。またページ数やボリュームに応じて自動で見積もりが算出できるツールのほか、セキュリティチェックに関する資料やエンタープライズプランの説明資料、過去の制作事例リストなどもすべて共有。事前の情報共有を徹底することが、協業プロジェクトの成功につながります」STUDIO導入でサイト構築を効率化、プロジェクトの重要なフェーズに投資できるように続いてフラー株式会社・櫻井氏が「大規模案件におけるSTUDIO導入のメリット」をテーマに講演を行いました。Web領域の中でも特にアプリ開発を強みとするフラー。エンジニアやデザイナーなどのクリエイティブ人材の多さを活かし、クライアントワークでは市場分析から戦略立案、デザイン、開発、マーケティング、データ分析に至るまで、一気通貫でものづくりを支援しています。そんな同社では、サービスやアプリのプロモーションサイトを構築する際にSTUDIOを活用しているそう。かつてはフルスクラッチや海外製サービスを使ってサイトを構築していた櫻井氏に、STUDIO導入によって感じた変化を伺いました。櫻井氏「一つ目は開発コストの変化です。サービス・アプリ制作はコンセプト立案、ブランディング、UI/UXデザイン、iOS/Androidの開発など、他工程で多くのコストがかかります。そのためデリバリーにはコストをかけられないことが多いのです。しかしサービスサイトもユーザーが初期段階で触れる重要なタッチポイントなので、手を抜きたくない。こうしたジレンマがSTUDIO導入によって解消されました。二つ目は運用の難易度とデザイン品質です。海外製のCMSは日本語対応がどうしても弱く、また英語のエディターはクライアントにとっても運用ハードルが高いため、なかなかおすすめしにくいという問題がありました。しかしSTUDIOは日本製のツールのため、日本語のフォントが充実しています。さらにCMS機能もわかりやすく、運用サポートがしやすい点も魅力でした。三つ目はコミュニケーションコストの削減です。特に大企業案件のプロジェクトでは、クライアント側も制作会社側も関わる人が多くなり、コミュニケーションコストが増大しがちです。しかしSTUDIOならPMとデザイナーで制作会社側の関係者が完結するので、関わる人数を最小限に抑えることができました」最後に櫻井氏は「STUDIOを活用することで、プロジェクトの重要な部分に投資ができるようになった。今後もSTUDIOの強みを活かしながら、大規模案件を効率的に進めていきたい」と締めくくりました。EnterpriseパートナーによるSTUDIO活用の実践的ヒントその後STUDIOのEnterpriseプラン事業を統括する菊地から、STUDIO Enterpriseプランの機能紹介を行いました。そして質疑応答では、gaz・吉岡氏とフラー社・櫻井氏、菊地の3名が、STUDIOの導入を検討する企業や制作会社からの質問に回答。STUDIO活用の具体的なヒントを解説しました。一つ目の質問は「STUDIOならではのWeb制作の進め方のコツ」について。吉岡氏は①Figmaなどのデザインツールでデザインを起こしてからSTUDIO上で実装するパターン ②STUDIOで直接デザインを起こすパターン の大きく2つがあるとし、「案件のスピードに合わせて柔軟に制作フローを変えている」と回答しました。吉岡氏「後者の進め方はSTUDIOのコメント機能を活用することで、クライアントとの認識合わせがスムーズに行える点がメリット。この進め方ができるのはSTUDIOならではだと思います」櫻井氏は上記の進め方に同意した上で「案件の性質に応じて制作フローを変えることで、最終的なアウトプットの質を高めている」と続けました。櫻井氏「デザインの方向性が定まっていない場合は、最初にFigmaで認識を合わせてからSTUDIOで実装を進めることで、手戻りを防いでいます。一方で、先ほどお伝えしたようなサービス・アプリ開発の上流から入る案件では、初期段階からSTUDIOを使う方が効率的です。STUDIOならレスポンシブデザインの確認やスクロールの感触などを即座にプレビューできるため、イメージのすり合わせもしやすくなります」2つ目の質問は「クライアントからSTUDIOでは実現できないことを求められた場合の対処方法」について。櫻井氏、吉岡氏ともに「最初期の認識合わせが重要」とした上で、提案時はどんな点に気をつけているかを紹介しました。櫻井氏「プロジェクトが始まってから『やっぱりSTUDIOではできません』と意見を翻すと、トラブルに発展することも。新規のサイト立ち上げの場合もリニューアルの場合も、現行サイトの機能や規模感を詳しくヒアリングし、本当にSTUDIOで対応可能かを事前に確認します。特にエンタープライズ案件では、PV数やページ数が大きくなる場合が多いので、将来的な保守・運用を見据えてサービスやプランを選定することが肝要です」また吉岡氏はメンテナンスの観点から、カスタムコード(※1)の利用は最低限にするのがベターだと語ります。吉岡氏「カスタムコードを使えば多くのデザインが実現できますが、長期的な保守管理を考えると、できるだけSTUDIOの純機能を活用する方が望ましいです。ノーコードの利点を活かすためにも、STUDIOのトグル機能など実現可能な方法を提案するようにしています」※1 カスタムコード:サイト全体やページ単位で自由にコードが記述できるSTUDIOの機能。詳しい情報はこちら次の質問は「インハウスのクリエイティブディレクター視点からのSTUDIO導入メリット」について。STUDIOの菊地からは、実際にSTUDIOを導入した顧客からのコメントを紹介しました。菊地「STUDIOはビジュアルデザインにこだわったWebサイトを作れるのが大きなメリット。例えばリバースプロキシを利用して部分的にSTUDIOを活用するなど、柔軟なサイト構成の元で運用できる点は非常に喜ばれています。またノーコードで迅速にキャンペーンサイトを立ち上げることができるため、デザインにこだわりながらも施策の試行回数を増やしたいというマーケティング担当者からも好評です」吉岡氏「リバースプロキシのニーズの高さは私も感じているところです。近日中にビジネスプランにもプロキシ連携機能が実装されるとのこと(※2)だったので、今後さらにSTUDIOを活用したいという企業が増えるのではないかと思います」※2 2024年5月より、Businessプラン以上で契約可能な2つのアドオン機能をリリースいたしました。詳しくは以下のプロダクトアップデート情報をご覧ください。独自ドメインのサブディレクトリでSTUDIOサイト公開が可能に。Businessプラン向けアドオン「カスタムプロキシ」リリースエンタープライズ領域におけるSTUDIO活用と顧客支援の実践的なヒントが語られた本イベント。大企業の複雑なニーズに応えるための工夫や、STUDIOを使った効率的なWeb制作の進め方が語られました。大企業のWeb制作に関わる方、またこれから関わりたいと思っている方は、ぜひ彼らのノウハウを参考にしてみてはいかがでしょうか。