2024年5月、ノーコードWeb制作プラットフォームSTUDIOのWeb制作代行会社・フリーランスが加盟プログラム「STUDIO Experts」に株式会社Eat, Play, Sleepが加盟しました。それぞれに屋号を持つクリエイターによるギルド組織の形態を取る同社では「プロジェクトのニーズや特性に合わせてアサインするメンバーや進め方を柔軟に変えている」と言います。今回は堤さんと山本さんに、株式会社Huuuuのコーポレートサイトリニューアルプロジェクトのデザインプロセスとこだわりを聞きました。クリエイターのプロフェッショナルが集まるギルド組織──Eat, Play, Sleep inc.の創業経緯を教えてください。堤:私が前職の株式会社ロフトワークでクリエイティブディレクターをしながら個人で運営していたメディア「ANNTENA」が創業のきっかけです。地域に根ざした文化的な産業と関わりが深まる中で、少しずつクライアントワークの依頼が増え、会社設立に至りました。──Eat, Play, Sleep inc.の会社の特徴は何ですか?堤:最大の特徴は「ANTENNA」を起点に、「OUT OF SIGHT!!!」などのマガジンの発行や、アーティストのプロデュースなど、事業の枠に留まらない自主活動を複数展開している点です。そうした経験は、メディアの立ち上げやコンテンツ制作を通じた社会との接点づくりに活かせます。結果として、現在はブランディング支援やコミュニティ作りなど、仕事の幅が多岐になりました。また社員は私とフォトグラファーの岡安の2人だけで、他のメンバーはギルド型の組織となっているのも特徴です。クライアントの依頼内容に応じてプロジェクトごとにチームを編成し、どんな依頼にも柔軟に対応できる体制を整えています。▲Eat, Play, Sleepメンバー。バックグラウンドやキャリア、特性が異なるメンバーが集まっている山本:私はFICCというブランドマーケティングの会社を経て今年独立し、Eat, Play, Sleep inc.でもクリエイティブディレクター 兼 デザイナーとして活動しています。堤とは「ANNTENA」の活動を通じて知り合い、今回の「株式会社Huuuu」のコーポレートサイトのほか「Eat, Play, Sleep」のコーポレートサイトのデザインも担当しました。サイトリニューアルを期に会社の方向性を見直し。社員の声に耳を傾けコンセプトを策定▲株式会社Huuuuコーポレートサイト──今回サイトリニューアルを担当された株式会社Huuuuの事業概要と制作経緯を教えてください。堤:株式会社HuuuuはWebメディア「ジモコロ」の元編集長、徳谷柿次郎さんが代表を務める編集プロダクションです。もともと彼らとは知り合いだったのですが、STUDIOで制作した当社のコーポレートサイトや、次世代の村作りプロジェクト「A HAMLET」のWebサイトを見てくれたことがきっかけで「自分たちもこんなものを作りたい」とリニューアルのご依頼をいただきました。──Web制作はどのような流れで進めましたか?堤:私がクリエイティブディレクターとしてコンセプトを言葉にしていく作業を担当し、山本がその言葉をデザインに落とし込む部分を担当しました。Huuuuさんのリニューアルは、会社のブランディングや方向性を見直す機会でもありました。プロジェクトキックオフ前に徳谷さんと話していると、社員の生の声を聞くために、Huuuuさんの社員が作家である土門蘭さんと対談するPodcastシリーズを企画していることがわかりました。そのプロセスの中で重要なキーワードを洗い出し、土門さんが練り上げた言葉を、さらに私と徳谷さんと3名で方向性をディスカッションして仕上げました。プロジェクトやクライアントに合わせて柔軟にデザインプロセスを変える──抽出したコンセプトをどうデザインに落とし込んでいったのでしょうか。山本:デザインコンセプトの段階では、ブランドや企業の人格を定義する「ブランド・アーキタイプ」というフレームワークを用いて複数のラフデザインパターンを見せながらHuuuuという企業の人格や「らしさ」についての共通認識を作っていきました。▲サイト制作時に使用したフレームワーク「ブランド・アーキタイプ」こういったフレームワークを用いることで、決定権のある人の好き嫌いではなく「どんなデザインであるべきか」という本質的な視点でディスカッションをすることができます。そこからはFigmaで作成したラフデザインとワイヤーフレームを元に、STUDIOを使用してWebサイト全体のプロトタイプを構築しました。STUDIOにはFigmaからデザインをインポートする機能があり、プロトタイプの作業をスムーズに進められます。プロトタイプはデザインツール上でも実現できますが、STUDIOではCMSやインラタクションの仕様のすり合わせまでできるため認識の齟齬を減らすことができました。そして、定義したデザインの方向性を元にデザインを進めていき、最終的に出来上がったのが現在のWebサイトです。TOPのメインビジュアルは彼らのコンセプトを画面全体に敷き詰め、そこから様々なプロジェクトが生まれている様を表現しています。また、彼らの「らしさ」として定義したキーワードから行動的でタフな印象と理知的な印象を掛け合わせていき表現を固めていきました。▲株式会社Huuuuコーポレートサイト制作時のデザインコンセプト・キーワード堤:Huuuuさんは編集のプロで、デザインに関してもしっかりと目利きができる人たちです。だからこそ完成に近いものを早期に作りながら、微細な違和感や絶妙なニュアンスのギャップを洗い出していく方が具体性があがり、またスピードもあげられると感じました。──コンテンツ作りに強いHuuuuさんならではの制作プロセスですね。堤:プロジェクトやクライアントの得意・不得意に合わせて、進め方も柔軟に変えています。Huuuuさんの場合は制作そのものに慣れていらっしゃいますし、成果物のイメージを想像しながらお話ができます。なのでこういったやり方で進めましたが、そうでないケースも多々あるかと思います。そういった場合は、私たちの方から直接会いに行って話を聞かせてもらったり、時には現場で丸1日一緒に過ごしたりすることもあります。手間はかかるのですが「言葉にはできない、でも本当はどうしたいのか」を身体感覚レベルで共有できることを目指して仕事ができると嬉しいですね。▲株式会社Eat, Play, Sleep の制作プロセス(COMPANY DECKより)──サイト公開後の反響はいかがでしたか?山本:Huuuuさんのサイトをきっかけに、STUDIOを使ったサイト制作に関する新たなご相談をいただいています。話を聞いてみると「STUDIOに興味はあったのだけれど、どこに制作をお願いすればいいのか分からなかった」という声も多く、STUDIOでここまでのデザインができるんだということを示せたのではないかと思います。手間暇をかけながら長く使い込めるサイトを作りたい──堤さんの目から見たSTUDIOを活用するメリットを教えてください。堤:私たちのクライアントは、既存の市場にないビジネスやこれまで明文化されていなかった価値観の確立を模索している方たちが比較的多いんです。自分たち自身もメジャーシーンではなかなか取り上げられない音楽・映画・アートにフォーカスを当てたメディアを長らく運営してきたからこそ、そこに共感してくださる方の依頼が多くなっています。しかし新しい取り組みに挑戦する会社ほど事業戦略のピボットも多く、Web制作にしっかりコストや手間をかけられないのも事実ですよね。一方でSNSだけだとなかなか信頼性を獲得するのが難しいという課題もあります。その点でSTUDIOは、比較的リーズナブルに自社が作りたい世界観を伝えられるツールとして非常に有用だと感じています。──STUDIO Expertsとして、今後どんなサイトを作っていきたいですか?山本:Webサイトは課題解決の一つの手段に過ぎません。上流工程からクライアントの本質的な課題を掘り下げ、Webを含めた最適な解決策を一緒に見出していけたらと考えています。堤:個人的には、使われる中で愛着が育まれるようなWebサイトを作っていきたいですね。意外性のあるレイアウトや凝ったエフェクトなど、作り込まれたサイトももちろん魅力的です。でも、10年以上メディアの企画から編集まで携わってきた私たちが大事にしていきたいのは、長く使い込めるWebサイトを作ること。職人が自分の使い込んだ大工道具を特別に感じるように、手間暇をかけるほどそのサイトに対する愛着が育まれると考えています。私は使い込まれてすり減っていくその道具を、一緒に作っていきたいんです。そのためには手間をかけて、Webサイトを育てていくクライアントさん側の覚悟も必要です。面倒くさいと思われてしまうかもしれないけど、そうしないと得られない価値があると信じています。簡単に、発信もコンテンツ制作もできる時代だからこそ、そのプロセスと手間で「らしさ」を表現することをサポートしていきたい。地道に小さな納得や愛着を積み上げていくことで、最終的に関わった人の満足につながるはずです。そういうことをやっていきたいですね。手間が愛着で、愛着が手間である。STUDIOは簡単にWebサイトを制作できるツールでもありますが、実現したいことは単なるコスト削減ではありません。戦略や企画といった事業の方向性を左右する部分により時間を割けるように、という想いがあります。まさに堤さんの言葉をお借りすれば「面倒くさいけど愛着が育まれる」部分。その相棒のようなツールとして、STUDIOが選ばれ続ける存在でありたいと感じたインタビューとなりました。「Eat, Play, Sleep」は、日本語で言い換えると「食べる」「遊ぶ」「寝る」。どれも私たちの日常生活においては不可欠である一方、おざなりにしてしまうこともあります。そんな人としての原点に立ち返るように、丁寧に輪郭を描いていくことを大切にしているEat, Play, Sleep inc.。そんな彼らとともに新しい選択肢や価値観を生み出し、カルチャーをつくっていきたいと考えている方はぜひご相談ください。▲株式会社Eat, Play, Sleepが手がけたWeb制作事例(一部)